こんにちは、なりちゃんです。
今回はブレヒロのゲームそのものに関連する記事ではなく、それに関わる企業さんの決算情報を理解することを通じて、ブロックチェーン界隈の事業者さんの苦労を推し量ってみようというハートウォーミングな記事をお送りします。
ですので、分析の視点としてgumi社の投資家の方の観点というよりも、ブロックチェーン界隈にいる1人の消費者の立場からこの決算がどのように見えたかという内容をお届けします。
そう、この記事の半分は優しさで出来ている・・・
(これ以上言ってもスベるだけだからやめておこうw)
ところでこの記事のアイキャッチ画像がYoutubeのサムネっぽく仕上がっているのは、筆者の個人的流行に影響されているだけなので特段気にしないでくださいw
そして「最速」と謳うことにも特に意味はありません。
ただ一回使ってみたかっただけなんです、世界最速という謳い文句をww
(1日経っちゃったから世界最速じゃないかもしれんorz)
それでは早速本題に入っていきましょう。
本記事のコンテンツです。
一気読みするにはちょっとボリュームが多いかもしれませんが、テーマ分けしているので気になるところだけピックアップしてお読みいただくのも良いかと!
【目次】
本記事を執筆するに際して参照した決算資料は下記の通りです。
④2021年4月期の四半期報告書、適時開示等
その他のIRニュース含め全てご覧になりたい場合はコチラ⇒Link
ちなみにですが、本記事はPART2と題されているように、実はPART1が存在します。
2020年4月期の決算をざっくり解説した記事がありますので、前年の状況をササっと確認したい場合にはコチラの記事もあわせてご参照ください。
ハイライト情報を見てみよう
何事も情報にあたる時に大切なことは全体像から把握することですよね。
決算情報も同様に全体像を把握するところからスタートするのですが、その際に見るべき情報がハイライト情報です。
決算短信であれば1ページ目の鑑、有価証券報告書であれば表紙の次ページから始まる企業情報の項目にまとめられています。
本記事では、gumiグループの業績を俯瞰で眺めるために連結損益計算書というグループ全体の業績を開示する書類の主要項目に絞って5年分ほど並べてみました。
過去5年間の連結業績推移
というわけでまずはこちらをご覧ください。
過去5年間のgumiグループの連結業績です。
ざっくりとした流れを見ますと、2017~2019にかけて業績が低迷しますが、2020/4期に営業黒字を取り戻し、当期はそれを継続しているというような流れですね。
先にご紹介したPART1の記事でご説明しているのですが、2020/4期は海外(特に欧州地域)における不採算事業の整理を行っていたために売上高は減少していますが、国内でFFBE幻影戦争の売上が好調であったため、利益ベースでは大幅に改善した形となっています。
しかしよく見ると当期は売上高、営業利益ともに前年比では減少しているようですので、どのような要因があるのか気になるところです。
一方で営業外収益が異常に増加しており、これが要因となって経常利益及び当期純利益は前期を上回る結果となっていますからここにも注目です。
特別損益も大幅にマイナスとなっているのでどのような動きがあったのかを確認する必要がありそうですね。
簡単な財務指標分析
財務指標分析をすると重要な変動を示唆する兆候を発見することが出来ます。
手法は様々ありますが、本当に基本的なものでも意外と色々なことが見て取れるので実際にやってみましょう。
こちらに示したのは、経営学とか会計学とかを勉強したことがある方なら誰でも知っている、ごく一般的な指標です。(本記事では指標の詳細説明は割愛します)
例えば経常利益率を見ると、前期比で22%程度上昇しており、明らかに営業外収益においてとてもインパクトのある事象が発生していることが分かります。ROAの変動からも同じようなシグナルを受け取ることが出来ます。先に述べた営業外収益の大幅増加という事象はこのような指標の変動としても表れてくるんですね。
そしてROAが改善しているのにROEが悪化しているというのは、経常利益と当期純利益の間で大きな損失項目が存在していることを示唆しますので、上記で見たように特別損益の大幅マイナスというのがここにも表れているワケです。
また、流動比率がとても改善している点にも注目です。営業利益率が前期より低下しているのに流動資産が大きく増加している?もしくは流動負債が大きく減少している?という疑問が湧きますし、営業外収益が大きく改善していることと関係があるのかな?という見え方もしてきます。
このように、財務指標というのは決算情報の重要な変動を示唆するシグナルを発してくれるとても便利なツールです。もちろん、業種や企業に適さないものを強引に当てはめると却って誤った理解をしてしまうこともありますが、全体を俯瞰して見るためにはとても有効な手法と言えます。
当期の業績を分割して見てみよう
では当期の業績を見るにあたって、より見やすくするために四半期ごとの数値に分割してみましょう。このような手法は一般的には季節変動が大きい業種や事業を行う企業の分析に有効なのですが、そうでない企業であっても時系列的に数値を見ることが出来るのでおススメです。
同じような表を2つ並べていますが、上段が各四半期の累計数値、下段は各四半期3ヶ月分のみの業績となっています。
特に下段の四半期3ヶ月ごとの業績をQ1からQ4まで横並びに見ると色々な点が見えてきますね。
前年比で売上も営業利益も減少していますが、四半期ごとに区切ると主にQ4が要因になっていることが分かります。
そして営業外収益もほとんどがQ4で発生しているということが見えてきました。
この点を頭に入れて決算説明資料を読んでみると、p4にこのような説明があります。
~gumi社 2021年4月期決算説明資料より抜粋~
主要事業であるモバイルオンラインゲームで計画通りのリリースが出来なかったり、配信長期化による売上減少などの要因で低調だったということが他のページの説明などから読み取ることが出来ます。
また、暗号資産の時価上昇に伴い一部売却等によって営業外収益が多額に計上されていることも分かりました。
gumi社は4月末決算ですから、ブロックチェーン界隈にいる人にとってはどこもかしこも
A・T・H!A・T・H!
と浮かれていた時期ですから、これはとても分かりやすいですねw
損益だけじゃない。キャッシュ・フローにも注目しよう!
損益の情報が業績を理解する上で重要なのは言うまでもありませんが、キャッシュ・フロー情報というのも企業の事業活動を理解する上で大変貴重な情報です。
超簡単なキャッシュ・フロー情報の見方
キャッシュ・フロー情報は一見すると読み取りにくいと感じる方もいるかもしれません。(ご興味のある方は決算短信のp12、p13をご覧ください。連結キャッシュ・フロー計算書という書類が開示されています。)
ほとんどの場合、キャッシュ・フロー計算書は間接法という手法で作成されています。詳しいご説明はここでは割愛しますが、より簡素な事務負担で作成できるやり方が間接法であるとご理解ください。
この方法は、事務作業が簡素化されますが、慣れないと非常に読みにくい仕上がりになるという特徴があります。
しかし、良く分からなくても大きく3つに分かれているキャッシュ・フロー区分の内容を抑えるだけでチョット理解することが出来ます。
- 投資活動によるキャッシュ・フロー
投資活動によるキャッシュ・フローは読んで字のごとく企業の投資活動の成果を表すものです。
この区分は、合計がマイナスだからといって業績が悪いということを示すとは限りません。むしろ、マイナスであるということは何かしら将来に向けた投資活動を行っているということであり、企業として事業投資等をする資金余力があるという見方ができます。
逆にプラスの場合は少し注意が必要です。例えば、資金繰りが苦しいために土地や保有株式などを売却して資金捻出をしていることが原因かもしれないからです。
- 財務活動によるキャッシュ・フロー
こちらも読んで字のごとくです。財務活動と言うと主に借入の実行・返済、配当金の支払い、新株発行、社債発行・償還といった事項が挙げられます。
企業の資金調達活動が主要項目ごと開示されていますので、資金繰りの状況を窺い知ることが出来るワケですね。
- 営業活動によるキャッシュ・フロー
何故これを3番目に持ってきたかと言うと、営業キャッシュ・フローの定義が
「投資活動でも財務活動でもないキャッシュ・フロー」
だからです。
なんじゃそりゃ、と思われる方もいるかもしれませんが、これはキャッシュ・フロー計算書の作成ルールなので仕方ないのです。
例えばですが、台風で会社の建物などに損害を受けてしまって多額の修理費用がかかったとしましょう。これって会社の営業活動とは関係ないところで発生したものですが、キャッシュ・フロー計算書では営業キャッシュ・フローの区分に集計されるんです。
なので、純粋な営業活動の成果を表すものではないと理解しつつも、概ね営業利益に近しいものを示していると考えると良いと思います。
このように各キャッシュ・フロー区分を大まかに理解しておけば、ざっと眺めるだけでも情報を読み取ることが出来ます。
上記の理解だけでもあれば・・
営業⇒プラスが良いに決まってる
投資⇒プラスでもやや注意が必要
財務⇒プラスの時は借入実行など資金需要が出ている、マイナスは資金余力がある
みたいな見方は出来るワケですね。
なので、営業プラス、投資マイナス、財務マイナスというキャッシュ・フローで例えトータルがマイナスでもそこまで悪く見えません。
一方で、営業マイナス、投資プラス、財務プラスみたいなのを見てしまうと、トータルがプラスだったとしても大丈夫かな?と不安になってしまいます。
実際にキャッシュ・フロー計算書の数値を見てみよう
キャッシュフローの各区分の合計を抜粋する形で数値をまとめてみましたのでこちらをご覧ください。
左から前期のキャッシュ・フロー、当期のQ2、年度累計と並んでいます。
財務キャッシュ・フローの下にある「現金及び現金同等物の換算差額」というものがありますが、これは外貨建ての資産や負債の相場変動による換算差額です。
gumi社の当期のキャッシュ・フローをざっくり見ると、営業はプラス、投資はマイナス、財務はプラスでトータルプラスとなっています。
この動きは、営業活動でしっかり利益を稼ぎ、将来に向けた投資を行い、必要な運転資金を調達している、と見れば第一印象としては好意的に捉えたくなるような結果と言えます。
もちろん、詳細に見るためにはキャッシュ・フロー項目を個々に見ていく必要がありますが、各区分の合計を眺めるだけでも大まかな印象を持つことは出来るんですね。
適時開示を見てみよう
ここまでは決算数値を俯瞰で見ることで全体的な動きを把握しようと分析してきました。
それよりもう少し詳細に知りたいなという時には決算情報以外にも重要な情報があります。
それが適時開示です。
適時開示というのは、東証などの取引所に上場している企業が当初の業績と大きくことなる着地になりそう、など一定の要件をみたす事象が発生した時に、決算のタイミングとは関係なく投資家に向けて公表される情報のことです(超ざっくりですw)
もちろん、業績に関することだけでなく、重要な意思決定だったり、役員人事だったりと様々な情報が開示されており、適時開示情報を追跡することで企業の動きをより詳細に把握することが出来ます。
何故適時開示が必要なのか?
どうして適時開示が必要かと言うと、タイムリーな情報提供ということに尽きます。
企業は会社法や金融商品取引法に定める一定の財務書類等を開示する義務があるのですが、これらの法定開示は1年に1度だったり、四半期に1度だったりとおよそタイムリーな情報開示が追い付かない頻度です。
そのため、決算に影響を与えるような事象などが判明した時に開示する適時開示制度というものが各取引所において定められています。
適時・適切に情報開示をすることで投資家保護をしようという制度なワケです。
決算に関連する適時開示(2020年5月以降)
では具体的に決算情報に影響を与えるような適時開示を直近1年分ほど確認してみましょう。
※表中のDTAは繰延税金資産の略名です。英語表記はDeferred tax assetsです。
一部、前期(2020年4月期)の情報があるため、区別するためにグレーアウトしていますが、不要な情報という意味ではありません。
全てをピックアップしているワケではありませんが、それでも結構な量の情報が開示されているということがわかると思います。特に営業外収益と特別損失に関する項目が多いようです。
ではどれくらいのことが読み取れるのか、試しに数値化してみましょう。
上記の適時開示からわかる連結業績への影響額を単純に合計した金額と、連結損益計算書(PL)に計上されている金額を比較すると下記のようになります。
どうでしょうか?
決算数値の割と大部分が適時開示情報から読み取れることが伝わったでしょうか。
常にこんなに近似するわけではありませんが、2021年4月期に関しては多くの情報が開示されていたことがわかると思います。
では、上記の項目を主要な区分ごとに少し内容を掘り下げてみましょう。
(一番下に記載されている法人税等調整額は最終章で触れます)
営業外収益
営業外収益の区分では暗号資産評価益、暗号資産売却益、持分法による投資利益の項目が大きく発生しています。
一言で説明すると下記のようになります。
- 暗号資産評価益…保有する暗号資産の含み益
- 暗号資産売却益…暗号資産で利確した金額
- 持分法による投資利益…持分法適用関連会社の業績取り込み
暗号資産に関する利益は、gumi venturesやgumi cryptosといった子会社が保有する暗号資産によって生じたもののようですから、その源泉を辿ると給付金だったりするのかもしれませんね。
(RARI様、PAINT様、その節は大変お世話になりましたw)
持分法による投資利益というのは、一定割合以上の議決権を持っている投資先の業績を持分比率に応じて自社グループの業績として取り込んだ結果を言います。逆に損失を計上した時は損失を取り込みます。
当期に関しては、VR Fund, L.Pという投資先の時価が大幅に上がったことで多額に計上されているという適時開示が公表されていました。
Tips
VR Fund, L.Pという投資先はアメリカのデラウェア州にあるようです。主な事業はXRにおける投資とのことですので、この後取り上げるセグメント情報との関連で見るとXR事業に分類される投資先と見ることができます。
しかし、持分法による投資利益は営業外収益なので、セグメント損益に含まれていないという点は要チェックですね。(セグメント情報の項で再度触れます)
特別損失
特別損失は、投資有価証券評価損、減損損失の2つが挙げられています。
こちらの簡単に項目をご説明します。
この後の説明のためにわざと似た言い回しでご説明しました。
実はこれら2つの項目というのは「減損」の会計処理という点で共通しており、別個の会計ルールに従って処理されているものですが、その根底にある考え方が共通しているものなんですね。
それを掘り下げてご説明する前に、当期数値の内訳を確認しておきたいと思います。
(投資有価証券評価損 634百万円の内訳)
Double jump tokyo㈱株式の減損 282百万円、その他株式の減損 352百万円。
なお、連結子会社である㈱エイリムの株式を708百万円減損処理しているという適時開示がありますが、これは連結決算での話ではなく、gumi社の個別決算での内容なので連結業績には影響しません。
(減損損失 1,688百万円の内訳)
開発中の一部タイトルの収益性が低下したことを理由にソフトウェアを減損したもの。
口述しますが、これはセグメント情報を見ると全てモバイルオンラインゲーム事業に関するものであるということが分かります。
減損という会計処理を理解する
まずは減損という会計処理の基本的な考え方を簡単にご説明します。
減損というのは、保有する固定資産の価値が著しく下落し回復の可能性が見込めない場合、これを当期の損失として処理することを言います。
「固定資産の価値」というのは、金融資産だったら時価などで測定されるかもしれませんし、非金融資産だったらDCF(ディスカウントキャッシュフロー)法などキャッシュフローを基準にして測定されるかもしれません。種類と用途によって価値の測定方法は様々です。
いずれにしても決算の時点で相当の損失が見込まれていて、なおかつ回復の見込みがないのであれば、それは現時点で損失を認識すべきだ、という考え方が減損処理です。
文章だけで説明されると、「著しい下落とは?」「回復の可能性が見込めない場合とは?」と疑問も湧くと思いますが、実務上はある程度画一的なルールが設けられています。
これらは判断が介入する余地が大きいので、判断基準を設けないと結果として公表される決算情報を企業間で比較することが難しくなってしまうワケですね。
ですので、一定の要件を満たしてしまうと、経営陣の意志とは別にドライに損切りされる側面があるよという点を覚えておくと、一歩先行く理解に繋がる可能性があります。
減損処理の結果と経営意思決定
上でご説明したように、減損処理の結果と経営意思決定は一致しないこともあるということです。
これをご説明するために敢えてDouble jump tokyo㈱と㈱エイリムの株式減損について社名をあげて触れました。
ここにスタートアップ事業の苦労が現れていると思います。
ブレヒロに置き換えて考えてみましょう。
ブレヒロ1周年記念放送にて、前任PのまつPと現Pのまっす~によって今後の運営方針について言及されました。
「ブレヒロは現在、通常ならばサービス終了してもおかしくない状況にある。それでもDJTはブレヒロのサービスを閉じずに継続します。ただし、継続するためにはコスト削減をしなければいけない。そのためには開発リソースを削減せざるを得ない。」
このような運営方針に方向転換し、継続していきますというお話をいただいたワケです。
勿論、DJTさんには自社IPのマイクリプトヒーローズや先日正式リリースしたマイクリプトサーガなどのタイトルもありますし、MCH+のプラットフォームを使用しているブレヒロ以外のタイトルも抱えている。
まだまだ黎明期のこの業界において、ノウハウの蓄積というのは何にも代えがたい財産でしょうから、ある程度の業績は目を瞑ってもGo!という経営判断はあり得ると思います。
一方で、会計処理を見ると株式の減損という事実はありますので、現状での業績が苦しいということは我々も認識しておくべきでしょう。
このように、必ずしも減損処理というものは経営者の判断でその資産や事業を損切りして切り捨てるというものではないというのは企業活動を理解する上で重要かなと、個人的には思います。
もちろん、多くの場合は終息事業に関する固定資産の減損のように、その事業を縮小あるいは終わらせるという局面で減損処理が登場するものであることは間違いありません。
セグメント情報を見てみよう
ここまでの決算レビューは、四半期ごとの分割や適時開示のレビューという
「時系列に沿った分析」
をしています。
1年間の決算情報を縦に分割した分析とでも表現できるかもしれません。
これから見るセグメント情報は
「事業別の分析」
であるため、時系列との対比で言えば横に分割した分析なのかもしれません。
(人によっては縦横のイメージが逆かも?まぁ、細かい事はキニシナイデ)
セグメント情報とは?
セグメント情報というのは、簡単に言えば事業別の収益性を投資家に判断してもらうために開示されるものです。
厳密には他にも開示事項はあるのですが、おそらく閲覧される情報は事業別の業績がメインでしょうから、本記事ではその点にフォーカスしてご紹介します。
ではセグメント情報の前期比較を見てみましょう。
簡単に見られるように開示資料とは形式を変えており、また、差し込み画像が見えにくくなる関係で合計欄を省略していますがご了承ください。
なお、売上高の下の営業利益とある部分は、開示書類上はセグメント利益と表記されています。敢えて営業利益と記載したのは、gumi社のセグメント利益は営業利益と一致させているのでこのように表記しました。
企業によっては経常利益と一致させている場合もありますので、セグメント情報を見る時はセグメント利益が連結損益計算書のどの段階損益と一致しているのかをしっかり見極めて分析することが肝要です。
これを見ると、前期比較で業績が低下した要因がほぼモバイルオンラインゲームの売上、利益の減少だということが分かると思います。
XR事業は損失減少、ブロックチェーン事業は初の単年度黒字となったようです。
このように事業別に業績が見えるとイメージが湧きやすいですし、決算説明資料の説明も入ってきやすいのではないかと思います。
でも実はセグメント情報をより良く理解するために大切なポイントは他にもあります。
セグメント情報は定性情報との照らし合わせで理解しよう
各種の開示書類(有価証券報告書、四半期報告書、決算短信など)において、決算数値の開示よりも前に、文章で事業の状況などを説明するページが先に登場します。
目次の名称は様々なのですが、文章によって企業の事業内容や業績の概要などを説明する箇所を総じて「定性情報」と言います。
この定性情報には色々な情報が含まれていますが、セグメント別の活動内容や業績の概要なども言及されますので、セグメント情報を理解するためには定性情報を読むというのが大きなヒントになるワケです。
昨日発表された決算短信で言えば、p2において「当期の経営成績の概況」というタイトルでセグメント別の概要が説明されているのでそれに沿って理解してみましょう。
モバイルオンラインゲーム事業
この事業は自らゲームの開発・運営をする事業ですから、配信タイトルが長期化すればするほど利益率は逓減するでしょうし、開発コストの増加が利益率に直結しますね。
当期はFFBE幻影戦争のグローバル展開では成功しているものの、外注コスト増などを吸収するには至らず、前年比で売上・利益ともに減少という結果になったようです。
加えて、一部開発タイトルに係るソフトウェアの減損をしています。
ここで上の表に記載している営業利益と減損損失の金額を見てみます。
営業利益は1,629百万円、減損損失は1,688百万円となっており、ほぼ同額です。
セグメント情報の業績開示という点では営業利益を獲得できる能力があることは明白ですが、事業全体の結果としてどれだけの収益をもたらしたかという点に着目すると、当期においてはほぼトントンだったという見方が出来なくもありません。
(もちろん、減損というのは先に述べたように将来損失が発生しそうなものを計上しているという側面がありますので、将来の不要なコスト負担が減って身軽になったという見方もあります。)
この事業はgumiグループにとっての収益源ですから、単年度ないし中期計画レベルでの配信計画が実現されることを祈りたいところです。
XR事業
次にXR事業を見てみます。
ちょっと決算短信の記述をそのまま引用してみます。
「XR事業に関しては、将来、市場の急拡大が見込まれるXR市場において早期に優位なポジションを築くことが重要な課題であると考えております。当社グループは、市場の状況に合わせて投資を行っていく方針であり、市場の黎明期においては国内外にて主にファンド出資を通じたXR関連企業の成長支援を実施し、また成長期においてはコンテンツの開発を主体的に取り組み、XR事業の収益化を目指しております。」
これを読むと、市場の黎明期における現在においては主にファンド出資を通じた支援事業をしているので、現状はgumiグループとしてコンテンツ開発はしていない状況であるという理解が出来そうです。
このような理解のもとで上記のセグメント情報の数値を見ると、XR事業の売上がゼロであるというのはある意味当たり前という気がしますね。
投資は行っているのでおそらく管理コストがかかっている分だけ営業利益がマイナスなのだろうなと想像しますし、おそらくしばらくはそんな感じなのだろうと思うのではないでしょうか。
ここで、この章の冒頭でワタシが「gumi社のセグメント利益は営業利益と一致させている」という点に言及したことを思い出してください。あわせて、適時開示の営業外収益の説明で持分法による投資利益のご説明も思い出してください。
XR事業の投資として、VR Fund, L.Pという投資先から持分法による投資利益が20億円以上も発生しています。
これってXR事業における投資の成果だと思うのですが、残念ながらセグメント利益が営業利益と一致しているために、セグメント情報で読み取りにくい状態になっています。
しかし、定性情報と合わせてXR事業セグメントの状況を把握すれば、実は投資の成果が大きく結果を出しているということが理解できるかと思います。
ブロックチェーン事業
最後にブロックチェーン事業です。
gumiグループとしては投資を主軸としてブロックチェーン業界の成長支援をするということですが、子会社のgumi cryptos社が運営するコンセンサスノード報酬が売上計上されており、結果として黒字化に成功されているようです。
このgumi cryptosという会社は、DJTさんに直接出資をしている会社なのですが、当期において保有するDJT株式を282百万円減損しています。
この点を踏まえると、営業ベースでは黒字化したものの、主軸となる投資成果を踏まえて考えると全体として黒字化を達成したという状況では無いのかなと感じますし、逆にいうと今は歯を食いしばって頑張っているということなんだと思います。
それが証拠に決算説明資料にはこのような記述があります。
~参照元 決算説明資料p31~
こちらを見るとわかるようにDJTに対する追加出資を実施しており、今後もブロックチェーン事業において協業体制を構築していくとのことですから、gumiさんもDJTさんも引き続き業界発展のために頑張っていただきたいですね。
Tips
今回のgumi CryptosからDJTへの出資は無議決権株式なのでしょうか?
PART1の記事でもご紹介しているとおり、実はgumi Cryptosは普通に考えればDJTを子会社にするレベルでDJTの株式を持っています。ただ、その一部(というか大部分?)が無議決権株式という株主総会で議決権行使できない株式であるために、連結子会社でも持分法適用関連会社でもないワケですが、果たして今回は・・。
個人的には全て無議決権株式なのかな?と推測しています。追加出資が6/10付けで実行されており、事象としては後発事象(決算日後に発生した事象)というものに該当しますが、例えば追加出資の結果連結子会社とか持分法適用関連会社になることで連結範囲の変更を伴うということならば、適時開示出してるんじゃないかな?と思ったからです。
一応、2021年7月期Q1決算を見ればざっくり答え合わせが出来そうですが。連結範囲の変更がなければ無議決権株式だったんだなと解釈することにしようかな?
【マニア向け】一連の決算情報から見えた疑問点
最後に取り上げるテーマは正直言って僕の個人的な趣味の話になります。
(ここまでも十分趣味ですがねwww)
割とディープな内容なので用語説明などは省略しますから、ご興味がなければスキップ推奨です。
前期の決算から分析しているのでその流れでgumi社の業績を自分なりに理解してみて、疑問に感じた点をご紹介します。
(実のところ、PART1の記事で何故ここを掘り下げてなかったんだと1年前の自分にも疑問を抱いていますww)
ワタシはgumi社の株主ではないし、株式投資はしない主義なので株主総会に出席することは決してないのですが、もし自分が株主ならこれから書くことについて質問してみたいです。
税効果会計 ~ 繰延税金資産の回収可能性 ~
話が少し遡るのですが、2020/6/5の適時開示(Link)を振り返る必要があります。
一言でいえば、今後の業績が上向くことが見込まれるため、繰延税金資産を523百万円計上します、という話です。
正しく理解するために2020年4月期の有価証券報告書に記載されている税効果会計に関する注記情報を確認してみます。
(下記は2年前と1年前の比較です。今年のデータは7月に提出予定の有価証券報告書で確認できると思います)
わかりやすくするために若干用語を変えてますが、概ねこんな感じです。
これを見ると、将来減算一時差異のうち、タックスプランニングが必要になるような長期項目って減価償却超過額と繰越欠損金くらいだと思うんです。
それに、実際※1にあるように繰越欠損金に対する評価性引当額が減少しているので、その見合いの繰延税金資産が計上されたことは間違いないはず。
ここまでが2020/6/5の適時開示に対するワタシの理解。
次に2021/6/11の適時開示(Link)を見てみますと、今後の業績動向を考慮して繰延税金資産の一部を取り崩した、とあります。
ただし、他の要素を含めた合計金額が適時開示されているので、全文を引用して整理してみたいと思います。
~適時開示より抜粋~
3.法人税等調整額(損)の計上について
2021 年4月期の業績及び今後の業績動向等を勘案し、繰延税金資産の回収可能性について慎重に検討した結果、繰延税金資産の一部の取り崩しをいたしました。加えて、連結上、繰延税金負債の計上を行ったことから、2021 年4月期連結決算及び 2021 年4月期個別決算において、法人税等調整額(損)としてそれぞれ 1,187 百万円、545 百万円を計上いたします。
このように連結業績に影響を与える法人税等調整額(損)は1,187百万円ですが、その内訳が①繰延税金資産の取り崩し、②連結上の繰延税金負債の計上、の2つから構成されています。
なので、連結BS上の繰延税金資産の増減額を確認してみます。
2020/4期:1,081百万円
2021/4期:506百万円
増減:△575百万円
するとこのくらい増減していることがわかります。
このうちいくらが適時開示で言う一部取り崩しによる影響なのかは現時点では分かりかねますが、上で確認したように将来減算一時差異の大部分は減価償却超過額と繰越欠損金なので、全額ではなくとも大部分が取り崩しによる減少と考えるのが自然でしょう。
長い記事のくせにさらに前置きが長くなって申し訳ないのですがw、このように前年の繰延税金資産の計上から今年の繰延税金資産の取り崩しに至るまで、あまりにスパンが短すぎるというのがワタシの感想です。
もちろん、いくら事業計画を精緻に作り上げてもその通りにいくとは限りませんから、当初計画との乖離が思いのほか生じてしまった、というのが直接的な原因なのかもしれません。
そうであるならば、繰延税金資産の取り崩しに至ったのもある程度納得感はありますが、逆にモバイルオンラインゲーム事業の収益性についてリスクを高く評価しなければいけないのか?という疑問も生じます。
セグメント情報を見ればわかるように、まだまだモバイルオンラインゲーム事業がgumiグループの主軸であり、ここで利益を獲得して他の領域の投資を行う、というのが現在目指している方向性でしょう。
そのメインセグメントの収益性がこんなに短期間に変動してしまうものなのか?もしそうならば、有価証券報告書に記載されている対処すべき課題とか、事業等のリスクに記載されている項目のどのあたりがハイリスクであると考えているのか、といったようなことが少し気がかりではありますね。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
書き始めたら思いのほか色々詰め込みたくなっちゃって、却って見づらい記事になってしまいました。
ただ、読んでいただければある程度決算情報を読み解くヒントみたいなものは提供できたのではないかな?と思います。
ブレヒロ的にはPolygonネットワーク対応が実現し、プレイヤーさんが少しずつ戻ってきてる感がありますし、DJTとgumiの協業体制が今後も続くというのはBCGer的にはグッドニュースだったなと思っています。
まだまだ黎明期のブロックチェーン業界で色んな苦労もあるでしょうが、それを乗り越えて未来を切り拓いていただきたいですね!
今回の記事はこのへんで。
長文記事を最後まで読んでいただきありがとうございました!
ではでは皆様、良きブレヒロライフを!